美容室の開業資金はどれぐらい?費用の内訳や準備方法を解説

2025年07月04日

2025年07月04日 更新

美容室の開業資金

美容室の開業や美容師の独立にあたり、最も悩ましい部分は開業資金ではないでしょうか。
店舗の開業には、初期投資(イニシャルコスト)と呼ばれる費用と、開業後の運転資金がそれぞれかかるため、計画的に費用を捻出していかなければなりません。

美容師が独立開業を目指すときは、店舗を構えるために物件を取得し、役所などに申請手続きを行います。
スタッフの雇用や他店との差別化につなげるためのマーケティングなど、金銭面以外にも準備すべきポイントがあります。

この記事では、美容室の開業にかかる費用について、物件取得から1年間の運転資金までをそれぞれ紹介します。
資金の調達方法や融資を受けやすくするコツも取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。

美容室の開業にかかる費用

美容室の開業にかかる費用は、一般的に1,000万円~1,500万円程度が相場とされています。美容室開業にかかる具体的な費用は、次の8つのカテゴリに分けられます。

【美容室開業にかかる具体的な費用8つのカテゴリ】

  • 物件の取得にかかる費用
  • 内装工事にかかる費用
  • 美容器具の購入費用
  • 美容器具以外の設備費用
  • パーマやカラー用品などの材料費
  • 従業員の採用費用
  • 広告や宣伝費用
  • 開業後1年分の運営費用

これらの費用は、店舗の規模や立地、導入する設備のグレードによって大きく変動します。特に内装工事費は全体の約50%を占める最大の費用項目となるため、コストを抑えたい場合は居抜き物件の利用などを検討することが重要です。

以下で、具体的な費用を見ていきましょう。

美容室の物件の取得にかかる費用

物件取得費は、店舗用の空きスペース(テナント)を借りる際に必要となる初期費用です。賃貸契約時に一括で支払う必要があるため、開業前に必ず準備しておかなければなりません。

保証金

賃料の10~15ヶ月分

退去時に返還される場合が多い

前家賃

賃料の1~2ヶ月分

開業準備期間中の賃料にあたる

礼金

賃料の1~2ヶ月分

契約時に支払う謝礼金

仲介手数料

賃料の1ヶ月分

不動産会社への手数料

保証会社手数料

賃料の1ヶ月分

家賃保証会社利用時に発生

例えば、月額賃料が15万円の物件の場合、保証金だけで150万円~225万円程度が必要となります。これに前家賃や礼金、各種手数料を加えると、総額で200万円~300万円程度の初期費用が発生します。

物件選びの際は、賃料だけでなくこれらの初期費用も含めて資金計画を立てることが重要です。また、保証金は退去時に原状回復費用を差し引いて返還されるのが一般的ですが、契約内容により異なるため、事前にしっかりと確認しておく必要があります。

美容室の内装工事にかかる費用

内装工事費は美容室開業費用の中で最も大きな割合を占める項目で、全体の約50%に相当します。工事の規模や仕様によって費用は大きく変動しますが、適切な計画を立てることでコストを抑えることも可能です。

【内装工事費の目安】
スケルトン物件(空物件):1坪あたり40万円~60万円
居抜き物件: 1坪あたり20万円~40万円
外装工事::1坪あたり2万円~5万円

20坪の店舗でスケルトン物件を選んだ場合、内装工事費だけで800万円~1,200万円程度が必要となります。一方、居抜き物件を選択すれば、400万円~800万円程度に抑えることが可能です。

内装工事費を抑えるポイントとしては、以下のような方法があります。

【内装工事費を抑えるポイント】

  • 居抜き物件の活用:前テナントの設備を活用してコストダウン
  • DIYできる部分の自主施工:塗装や簡単な装飾は自分で行う
  • 複数業者からの見積もり取得:3社以上から見積もりを取って比較検討
  • 設備のグレード調整:必要最低限の機能に絞って高額設備を避ける

外装工事には、看板や照明の設置、外壁の修繕などが含まれます。店舗の顔となる部分なので、集客への影響を考慮して適切な投資を行いましょう。

美容器具の購入にかかる費用

美容器具の費用は、開業資金の中でもボリュームがかかる費用です。金額にすると100万円以上が目安です。

ドライヤーやヘアスチーマー、シャンプーユニットやパーマ用加湿器といった美容器具のほか、パーマ用加湿器・デジタルパーマ機・ヘッドバス、鏡(ドレッサー)といった設備一式に費用がかかります。

鏡やチェアはどの美容室でも設置されており、比較的価格の安いものも選べます。
一方、炭酸発生装置のようにオリジナリティの高い施術メニューを用意する場合は、機器の購入場所や購入費をよくリサーチしておきましょう。

予算に余裕があれば、高性能のシャワーヘッドやドライヤー、マッサージャーやスチームミストのような専門的な機器を取り入れて、他店と差別化することもできます。

美容器具の購入には、補助金や助成金を活用する方法もあります。
年度や自治体の予算、方針によって受けられる補助や助成の内容が変更される場合もあるため、自治体のホームページを確認してください。

美容器具以外の設備にかかる費用

美容器具以外の設備は、備品費として30万円程度を目安に揃えます。
パソコンやタブレットを含めると、50万円ほど見積もっておくと良いでしょう。

スタイリングチェア、美容師が座るスツールと施術用ワゴン、店内の設備として空気清浄機や加湿器など、設置するものをリストアップしておきましょう。

レジカウンターとレジシステム、洗濯機や掃除機も日常的に使用するものです。
いずれも施術や施術以外の業務に必要な設備のため、予算をオーバーしない範囲で使いやすいものを選びましょう。

美容器具の購入費用がそれほどかからない場合は、設備費用に予算を回すことができます。
店内で使うアイテムのうち、業務の効率化に役立つものや、快適に施術ができる物品を選んでみてください。

パーマやカラー用品などの材料にかかる費用

カラー剤やパーマ剤、スタイリング剤やシャンプー・トリートメントはいずれも「材料費」という勘定科目に含めます。
施術料金に対して15%前後〜20%を目安に設定します。
これらのアイテムは開業の前に買い揃えておきます。
開業資金全体でいうと5%までが目安となり、一例として開業資金が1,000万円の場合は、50万円までが捻出できる計算です。

施術ではラップ・アルミホイル・タオル・イヤーキャップのような消耗品類も必要になります。
勘定科目は「消耗品費」として計上します。

美容器具・その他の設備・材料費・消耗品費をすべて含めたときの割合は、開業資金の25%程度です。
開業資金が1,000万円のときは、250万円程度と考えてください。

美容室の経営において、どこに費用をかけるかが悩みどころです。
高級感のあるケア製品を使いたい、材料を妥協したくないような場合は、美容器具や美容器具以外の設備費用で調節しましょう。

従業員の採用にかかる費用

店舗スタッフを1人以上雇うときには、採用にかかる費用も考慮しておかなくてはなりません(すでにスタッフが決まっていれば採用活動は不要です)。

採用にかかる費用は、求人を出す媒体によって異なります。
求人サイトやフリーペーパー・求人雑誌への募集要項の掲載、人材紹介会社からの紹介、美容学校への求人掲出などが挙げられます。

募集広告として掲出する場合、広告のサイズが大きくなり、掲出期間が長くなるほど料金がかかります。
知り合いへの声掛けのみ費用がかかりませんが、他店から引き抜くような場合はその店舗の業務に支障が出ないように注意が必要です。

一例として、美容師を対象とする求人サイトに募集要項を出すときは、「月額プラン(定額プラン)」または「成果報酬型」から選びます。月額プランは一定額を毎月支払う形式で、成果報酬型は募集要項の掲出に費用がかからず、採用が決まってから費用を支払う形式です。

求人サイトの利用料金は、1ヶ月あたり2万円前後〜数十万円程度です。サイト内のサービスやオプションを利用すると追加料金がかかります。

美容室の広告や宣伝にかかる費用

集客は、店舗を運営するうえで重要な部分です。
開業資金の中でボリュームは大きくないものの、広告宣伝に一切費用をかけずに店舗を運営するのは難しいため、ある程度予算を割くようにしたいものです。

広告宣伝費の目安は、売上の3〜10%といわれています。開業前は売上がないため、開業資金の中から数%分を捻出すると考えましょう。

開業資金が1,000万円のうち3%を割く場合は、30万円までが広告宣伝に使えることになります。
費用を少しでも抑えるときは、SNSや口コミといった集客方法をうまく活用することが大切です。

美容室の開業までに、近隣の住民や店舗のあるエリア全体にオープンを知らせましょう。
認知してもらいながら、他店と差別化する工夫も盛り込みます。

マーケティング戦略として、新規顧客の獲得とリピーターの獲得を意識する必要があります。
店舗がある地域ではどのような美容室に需要があるのか、住んでいる人の年齢層や生活状況、人気店の特徴をしっかりとリサーチし、広告・宣伝につなげましょう。

開業初期を乗り越えた段階でもお客様が定着していなければ新規顧客を獲得しなければいけないため、基本的には継続的に広告宣伝費は必要です。

注意点として、広告宣伝は開業後も継続していかなければならないため、費用を多く見積もっておき、開業前と開業後でそれぞれ割り当てると良いでしょう。

宣伝効果は媒体によって異なるため、ターゲットとする顧客の属性にあわせて出稿するなどの工夫がおすすめです。

美容室開業後1年分の運営費用

美容室開業後の運営資金は、事業の継続に欠かせないものといえます。特に開業から1年間は顧客基盤の構築期間となるため、十分な運転資金を確保しておくことが成功の鍵となります。

1年分の運営費用の内訳は、以下の通りです。

月額

年額

家賃

15万円~30万円

120万円~240万円

人件費

3万円~5万円

180万円~360万円

光熱費

5万円~10万円

36万円~60万円

材料費

2万円~5万円

60万円~120万円

広告宣伝費

3万円~5万円

24万円~60万円

その他経費

3万円~5万円

36万円~60万円

運営費用を適切に見積もるには、次の点を押さえることが重要です。

【① 売上予測の立て方】

  • 1日の来店客数を保守的に見積もる(開業初期は1日5~10人程度)
  • 客単価を地域相場に基づいて設定
  • 季節変動や曜日による売上の変動を考慮

【② 固定費の管理】

  • 家賃は売上の20%以下に抑える
  • 人件費は売上の40%以下を目安とする
  • 光熱費や通信費などの固定費も定期的に見直す

【③ キャッシュフローの管理】

  • 月次の収支を詳細に把握
  • 売上の入金タイミングと支払いタイミングのズレを考慮
  • 3ヶ月分の運転資金は常に確保しておく

特に、開業初期は思うように売上が上がらないケースも多いため、6ヶ月~1年間は赤字が続く可能性があります。万が一に備えて、運転資金を十分に確保することが重要です。

美容室の開業資金を調達する方法

美容室開業の資金調達方法

美容室の開業資金を調達するために検討したい方法は、自己資金・日本政策金融公庫からの融資・補助金や助成金の活用になります。
それぞれの方法を詳しくみていきましょう。

自己資金を貯める

美容室の開業にあたり、金融機関から融資を受ける際に審査が行われます。
そこで重視される項目のひとつが、融資元金の返済能力です。

金融機関は返済を条件として一定金額の現金を貸し付けるため、漠然とした状態でお金を借りたいと申し出ても、返済能力が低い場合は不適格とされてしまいます。

独立前から少しずつ自己資金を貯め、開業資金全体の4分の1程度を目標にしましょう。
1,000万円なら25%の250万円が自己資金の目安です。

開業を考えはじめた時点で自己資金が手元に一切用意できていなければ、開業資金の4分の1が貯められるように計画的に貯蓄していきましょう。

日本政策金融公庫からの融資を受ける

日本政策金融公庫は、美容室開業を目指す事業者にとって最も利用しやすい融資制度の一つです。民間金融機関では対応が困難な小規模事業者や創業者向けの融資に特化しており、美容業界での実績も豊富です。

【新創業融資制度の概要】

  • 融資限度額:設備資金・運転資金合わせて3,000万円以内
  • 返済期間:設備資金15年以内、運転資金7年以内
  • 担保・保証人:原則不要
  • 金利:年2.2%~2.9%程度(令和6年時点)

日本政策金融公庫の創業融資の大きなメリットは、無担保・無保証人で利用できることです。そのため、自己資金が少ない美容師であっても、事業計画次第で必要な資金を調達することが可能になります。

【融資申請時に重要なポイント】

  • 自己資金の準備:融資希望額の1/3以上の自己資金が目安
  • 事業経験:美容師としての経験年数や技術力をアピール
  • 事業計画書:具体的で実現可能な計画を作成
  • 返済能力:安定した収益見込みを数値で示す

また、日本政策金融公庫では創業者向けの相談窓口も設置されており、事業計画書の作成指導や融資制度の詳細説明も受けられます。初めての創業で不安な方は、まず相談窓口を利用しましょう。

補助金や助成金を活用する

補助金や助成金は、原則として返済不要の資金であり、美容室開業時の負担を大幅に軽減できる制度です。国や地方自治体が提供するさまざまな制度があり、条件を満たせば積極的に活用すべきです。

補助金や助成金を活用するメリットは、以下の通りです。

【補助金や助成金を活用するメリット】

  • 返済義務がない
  • 金利負担がない
  • 事業の信用度が向上する
  • 経営改善のきっかけになる

ただし、補助金や助成金は、申請から交付まで半年~1年程度の時間がかかります。また、後払い方式を基本としているため、一時的に資金を負担する必要があります。さらに、採択率が100%ではないこと、用途や期間に制限があることなどには注意しましょう。

関連記事:等価騒音レベル(LAeq)とは?基準値・測定方法とその他の騒音レベル

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、美容室などの小規模事業者が販路開拓や生産性向上に取り組む際の費用を支援する制度です。美容業界では特に広告宣伝費や店舗改装費などに活用されることが多く、実用性の高い補助金として注目されています。

 

【制度の概要】

  • 補助上限額:通常枠50万円、特別枠200万円
  • 補助率:最大2/3
  • 対象経費:広告宣伝費、店舗改装費、設備購入費、専門家謝金など

美容室では、ホームページの制作費用や店舗内装の一部改装、POSシステムの導入費用などに活用できます。

申請の際は、商工会議所や商工会の支援を受けると、採択率が向上します。また、具体的な販路開拓計画を明確にすることも大切です。

小規模事業者持続化補助金は年に4回程度の公募があり、比較的申請しやすい制度です。ただし、交付決定前に発注した経費は対象外となるため、計画的な申請が必要です。

IT導入補助金

T導入補助金は、中小企業・小規模事業者がITツールを導入する際の費用を支援する制度です。美容室では予約管理システムやPOSレジ、会計ソフトなどの導入に活用でき、業務効率化と顧客サービス向上を同時に実現できます。

 

【制度の概要】

  • 補助上限額:通常枠最大450万円、インボイス枠最大350万円
  • 補助率:1/2~3/4
  • 対象ツール:事前に登録されたITツールのみ

美容室では、予約管理システムや顧客管理システム、給与計算ソフトなどの導入費用に利用できます。導入により、業務効率化や顧客データの一元管理、顧客満足度の向上につながるでしょう。

ただし、ITツールは、事前登録されたもののみが対象となります。また、導入後に効果測定が求められ、交付決定前に発注した費用は補助対象外となるため注意が必要です。

IT導入補助金は美容室の DX化を促進し、長期的な競争力向上に寄与する重要な制度です。特に人手不足が深刻な美容業界において、ITツールの活用は必要不可欠となっています。

創業支援助成金

創業支援助成金は、新たに事業を開始する事業者の創業コストを支援する制度です。国の制度に加えて、各地方自治体が独自に実施している制度もあり、美容室開業時の大きな支援となります。

 

【東京都創業助成金の例】

  • 助成上限額:300万円(下限100万円)
  • 助成率:2/3以内
  • 助成期間:最大2年間
  • 対象経費:人件費、賃借料、産業財産権出願・導入費、専門家指導費など

【対象要件】

  • 創業予定者または創業から5年未満の中小企業者
  • 本社または主たる事業所が東京都内にある
  • 一定の要件を満たす事業計画を有する

美容室では、開業初期のスタッフ人件費、店舗貸借料、専門家による経営指導料などに活用できます。

東京都以外にも、大阪市や名古屋市、福岡市などに同様の制度があります。各自治体によって制度内容は大きく異なるため、申請前に詳細を確認しましょう。

創業支援助成金は返済不要の資金であり、開業初期の資金繰りを大幅に改善できる制度です。ただし、競争率が高い場合も多いため、しっかりとした事業計画の準備が必要です。

美容室開業資金の融資を受けるには

開業資金の融資を受けるためには、事前の準備が大切です。融資を受けやすくするためのポイントとあわせてみていきましょう。

開業資金の融資を受けるための準備

融資を受けるために必要な3つの準備は次のとおりです。

【融資を受けるための準備】

  • 自己資金を貯める
  • 事業計画書を作成する
  • 補助金・助成金を調べる

融資を受けるためには返済能力が審査されるため、計画書の内容が根拠に基づいていること、自己資金を一定以上貯められていることが大切です。
開業のベースとなる事業計画書は、自己資金とあわせて計画的に準備をしましょう。

申請時点で補助金や助成金が打ち切られていないか、申請期間や助成が受けられる期間が過ぎていないかといった点もあわせて確認してください。

融資を通りやすくするポイント

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