美容師開業のコツ

美容室の開業にかかる費用と内訳・資金調達と融資の活用方法

2024年09月14日

美容師が独立開業を目指すときは、店舗を構えるために物件を取得し、役所などに申請手続きを行います。
スタッフの雇用や他店との差別化につなげるためのマーケティングなど、金銭面以外にも準備すべきポイントがあります。

どの美容室も、開業にあたって悩ましい部分が費用です。
店舗の開業には、初期投資(イニシャルコスト)と呼ばれる費用と、開業後の運転資金がそれぞれかかるため、計画的に費用を捻出していかなければなりません。

この記事では、美容室の開業にかかる費用について、物件取得から1年間の運転資金までをそれぞれ紹介します。
資金の調達方法や融資を受けやすくするコツも取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。

美容室の開業にかかる費用

美容室の開業にかかる費用は、次の8つに分けられます。

【美容室開業にかかる費用】

  • 物件を取得する費用
  • 内装の工事にかかる費用
  • 美容器具の購入費用
  • 美容器具以外の設備費用
  • パーマやカラー用品などの材料費用
  • 従業員の採用にかかる費用
  • 広告や宣伝にかかる費用
  • 1年分の維持費用

開業資金が用意できたら、店舗を構える場所を探します。内外装や美容器具、備品や材料を揃えて、従業員を雇用します。
店舗の広告・宣伝にも費用をかけながら集客し、1年間経営を続けていくのが基本的な流れです。

物件を取得する費用

物件取得費は、店舗用の空きスペース(テナント)に支払う手数料や礼金などの費用です。

【物件取得費の内訳と相場の一例】

保証金

賃料10ヶ月分

前家賃

賃料1~2ヶ月分

礼金

賃料1~2ヶ月分

仲介手数料

賃料1ヶ月分

保証会社手数料

賃料1ヶ月分

たとえば、テナントの賃料が12万円なら保証金は120万円が目安になります。
前家賃と呼ばれる、オープンまでの準備期間中に支払う賃料は1〜2ヶ月分が目安になるため、12〜24万円を支払います。

保証金や前家賃はいわゆる初期費用であり、開業時に支払うお金になります。まとまった金額がかかりますが、開業後の支払い義務はなくなるため、資金として用意しておきましょう。

礼金は、アパートやマンションの賃貸契約と同じ性質のお金です。
仲介手数料はテナントを紹介してくれた不動産会社への料金で、こちらも賃貸契約と同じく手数料が発生します。

テナントによっては、賃料を滞納した際に代わって支払いをしてくれる保証会社との契約も必要になります。
仲介手数料と同じく賃料の1ヶ月分が相場です。

内装の工事にかかる費用

内装工事は、新規に開店する店舗の多くが必要とする作業です。
居抜き物件のように、前の店舗の内装・設備が残っている場合は、その状態をできるかぎり活かして店づくりに活かすこともできます。

内装工事にかかる費用は、1坪あたり40万円前後が目安になります。
安くても20万円程度はかかるものと考え、坪数が大きな広い店舗ほど内装費がコストアップする点に注意が必要です。

内装以外では、外装にかかる工事費も見積もっておきましょう。壁の材質や色を変更したり、看板や照明を設置したりといったデザインが選べますが、工事内容によって金額が変わるため、業者とよく話し合って見積もりをとり、比較すると良いでしょう。

外装工事にかかる費用は、1坪あたり2〜5万円程度が目安です。
しかし店舗兼住宅として改築や増築を行う場合は、規模の大きな工事が入るため費用が割高になるケースもあります。

美容器具の購入費用

美容器具の費用は、開業資金の中でもボリュームがかかる費用です。金額にすると100万円以上が目安です。

ドライヤーやヘアスチーマー、シャンプーユニットやパーマ用加湿器といった美容器具のほか、パーマ用加湿器・デジタルパーマ機・ヘッドバス、鏡(ドレッサー)といった設備一式に費用がかかります。

鏡やチェアはどの美容室でも設置されており、比較的価格の安いものも選べます。
一方、炭酸発生装置のようにオリジナリティの高い施術メニューを用意する場合は、機器の購入場所や購入費をよくリサーチしておきましょう。

予算に余裕があれば、高性能のシャワーヘッドやドライヤー、マッサージャーやスチームミストのような専門的な機器を取り入れて、他店と差別化することもできます。

美容器具の購入には、補助金や助成金を活用する方法もあります。
年度や自治体の予算、方針によって受けられる補助や助成の内容が変更される場合もあるため、自治体のホームページを確認してください。

美容器具以外の設備費用

美容器具以外の設備は、備品費として30万円程度を目安に揃えます。
パソコンやタブレットを含めると、50万円ほど見積もっておくと良いでしょう。

スタイリングチェア、美容師が座るスツールと施術用ワゴン、店内の設備として空気清浄機や加湿器など、設置するものをリストアップしておきましょう。

レジカウンターとレジシステム、洗濯機や掃除機も日常的に使用するものです。
いずれも施術や施術以外の業務に必要な設備のため、予算をオーバーしない範囲で使いやすいものを選びましょう。

美容器具の購入費用がそれほどかからない場合は、設備費用に予算を回すことができます。
店内で使うアイテムのうち、業務の効率化に役立つものや、快適に施術ができる物品を選んでみてください。

パーマやカラー用品などの材料費用

カラー剤やパーマ剤、スタイリング剤やシャンプー・トリートメントはいずれも「材料費」という勘定科目に含めます。
施術料金に対して15%前後〜20%を目安に設定します。
これらのアイテムは開業の前に買い揃えておきます。
開業資金全体でいうと5%までが目安となり、一例として開業資金が1,000万円の場合は、50万円までが捻出できる計算です。

施術ではラップ・アルミホイル・タオル・イヤーキャップのような消耗品類も必要になります。
勘定科目は「消耗品費」として計上します。

美容器具・その他の設備・材料費・消耗品費をすべて含めたときの割合は、開業資金の25%程度です。
開業資金が1,000万円のときは、250万円程度と考えてください。

美容室の経営において、どこに費用をかけるかが悩みどころです。
高級感のあるケア製品を使いたい、材料を妥協したくないような場合は、美容器具や美容器具以外の設備費用で調節しましょう。

従業員の採用にかかる費用

店舗スタッフを1人以上雇うときには、採用にかかる費用も考慮しておかなくてはなりません(すでにスタッフが決まっていれば採用活動は不要です)。

採用にかかる費用は、求人を出す媒体によって異なります。
求人サイトやフリーペーパー・求人雑誌への募集要項の掲載、人材紹介会社からの紹介、美容学校への求人掲出などが挙げられます。

募集広告として掲出する場合、広告のサイズが大きくなり、掲出期間が長くなるほど料金がかかります。
知り合いへの声掛けのみ費用がかかりませんが、他店から引き抜くような場合はその店舗の業務に支障が出ないように注意が必要です。

一例として、美容師を対象とする求人サイトに募集要項を出すときは、「月額プラン(定額プラン)」または「成果報酬型」から選びます。月額プランは一定額を毎月支払う形式で、成果報酬型は募集要項の掲出に費用がかからず、採用が決まってから費用を支払う形式です。

求人サイトの利用料金は、1ヶ月あたり2万円前後〜数十万円程度です。サイト内のサービスやオプションを利用すると追加料金がかかります。

広告や宣伝にかかる費用

集客は、店舗を運営するうえで重要な部分です。
開業資金の中でボリュームは大きくないものの、広告宣伝に一切費用をかけずに店舗を運営するのは難しいため、ある程度予算を割くようにしたいものです。

広告宣伝費の目安は、売上の3〜10%といわれています。開業前は売上がないため、開業資金の中から数%分を捻出すると考えましょう。

開業資金が1,000万円のうち3%を割く場合は、30万円までが広告宣伝に使えることになります。
費用を少しでも抑えるときは、SNSや口コミといった集客方法をうまく活用することが大切です。

美容室の開業までに、近隣の住民や店舗のあるエリア全体にオープンを知らせましょう。
認知してもらいながら、他店と差別化する工夫も盛り込みます。

マーケティング戦略として、新規顧客の獲得とリピーターの獲得を意識する必要があります。
店舗がある地域ではどのような美容室に需要があるのか、住んでいる人の年齢層や生活状況、人気店の特徴をしっかりとリサーチし、広告・宣伝につなげましょう。

開業初期を乗り越えた段階でもお客様が定着していなければ新規顧客を獲得しなければいけないため、基本的には継続的に広告宣伝費は必要です。

注意点として、広告宣伝は開業後も継続していかなければならないため、費用を多く見積もっておき、開業前と開業後でそれぞれ割り当てると良いでしょう。

宣伝効果は媒体によって異なるため、ターゲットとする顧客の属性にあわせて出稿するなどの工夫がおすすめです。

1年分の維持費用

開業後は、準備した開業資金を使って店舗を運営します。
1年分の運転資金は前もって準備しておきましょう。

維持費の目安は、2014年に日本政策金融公庫が行った調査によれば、150万円となっています(サロン開設費に美容室を含む。資金の合計額が940万円の場合)。

開業資金の項目全体でみると内外装工事費が50.6%でもっとも多くの割合を占め、2番目に機械・什器・備品等の費用が21.0%となりました。150万円は開業資金の16%にあたり、全体でみると3番目にボリュームが大きくなっています。

内外装工事や機器に資金を充てすぎると運転資金が減ってしまうため、少しでも長く運営を続けるためには、運転資金以外の項目で割合を減らせないか工夫が必要です。

参考元:日本政策金融公庫「新たに美容業を始めるみなさまへ 創業の手引+」

美容室の開業における資金を調達する方法

美容室の開業資金を調達するために検討したい方法は、自己資金・日本政策金融公庫からの融資・補助金や助成金の活用の3点です。
それぞれの方法を詳しくみていきましょう。

自己資金を貯める

美容室の開業にあたり、金融機関から融資を受ける際に審査が行われます。
そこで重視される項目のひとつが、融資元金の返済能力です。

金融機関は返済を条件として一定金額の現金を貸し付けるため、漠然とした状態でお金を借りたいと申し出ても、返済能力が低い場合は不適格とされてしまいます。

独立前から少しずつ自己資金を貯め、開業資金全体の4分の1程度を目標にしましょう。
1,000万円なら25%の250万円が自己資金の目安です。

開業を考えはじめた時点で自己資金が手元に一切用意できていなければ、開業資金の4分の1が貯められるように計画的に貯蓄していきましょう。

日本政策金融公庫からの融資を受ける

日本政策金融公庫が2023年に発表した「2023年度新規開業実態調査」では、開業者全体でみた開業資金の平均値は1,027万円でした。(※)
複数の業種をあわせた結果とはいえ、1,000万円程度の開業資金を準備しなければならないことが本調査の結果からも判断できます。そこで、日本政策金融公庫では事業を開始してから一定の期間内に利用できる融資制度として、新規開業資金の貸し付けを行っています。

ほとんどの業種が利用できる「一般貸付」は、運転資金・設備資金の両方に使える資金として限度額4,800万円まで融資をしています。融資を受けながら、経営者保証免除特例制度のような制度の併用も可能です。

運転資金としての利用は5〜7年(※特に必要な場合は7年以内、据え置き期間1年以内)に返済を行い、設備資金としての利用は10年以内(据え置き期間2年以内)に返済する義務があります。

※参考元:日本政策金融公庫「2023年度新規開業実態調査」

関連記事:美容室開業資金のため融資を受けるための流れと審査通過のポイント

補助金や助成金を活用する

2024年現時点で、国や地方自治体からの補助金・助成金も美容室の開業に活用することができます。

東京都では、創業後5年未満の中小企業のうち、一定の要件を満たしていれば経費の一部を助成する「創業助成金」を提供しています。助成限度額は上限が400万円、下限が100万円です。(※)

注意点として、補助金や助成金は、交付決定日からの助成対象期間や助成率のほかにも助成対象となる経費の種類が定められていますので、要件にしたがって利用しなければなりません。

※参考元:東京都産業労働局「創業助成金(東京都中小企業振興公社)」

関連記事:美容室開業に活用できる助成金と活用前に押さえておきたいポイント

開業資金の融資を受けるには

開業資金の融資を受けるためには、事前の準備が大切です。融資を受けやすくするためのポイントとあわせてみていきましょう。

開業資金の融資を受けるうえでの準備

融資を受けるために必要な3つの準備は次のとおりです。

【融資を受けるための準備】

  • 自己資金を貯める
  • 事業計画書を作成する
  • 補助金・助成金を調べる

融資を受けるためには返済能力が審査されるため、計画書の内容が根拠に基づいていること、自己資金を一定以上貯められていることが大切です。
開業のベースとなる事業計画書は、自己資金とあわせて計画的に準備をしましょう。

申請時点で補助金や助成金が打ち切られていないか、申請期間や助成が受けられる期間が過ぎていないかといった点もあわせて確認してください。

融資を通りやすくするポイント

事業計画書の記載は、提供するサービスや商品の内容、金額などを具体的に記載しましょう。
記載内容の実現可能性を審査されるため、内容に自信がなければ商工会議所・商工会の起業相談や、税理士・起業コンサルタントにご相談ください。

開業資金と事業計画を準備する

美容室の開業にかかる費用について、内訳や準備のポイントを紹介しました。
開業資金の平均値は1,000万円程度ですが、美容室の広さや家賃、設備にかける費用を工夫すれば、支出を抑えて限りある資金を有効活用できます。

国・自治体の補助金や助成金をチェックし、資金として活用する方法もぜひ検討してみてください。

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