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1人で美容室を開業するための費用と申請可能な助成金・補助金の種類

2024年09月27日

美容室をオーナー1人が開業するためには、物件を借りたり設備を揃えたりするための開業資金が必要です。

開業資金は店舗の広さや施術内容などによって変わりますが、開業してからの運転資金として活用することも考えて、一定程度の資金を準備しておかなければなりません。

この記事では、オーナーが1人で美容室を開業するためにかかる費用と、資金として活用できる7つの補助金や助成金について紹介します。

申請から受け取りまでの流れも取り上げていますので、これからサロンや理美容室の開業を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

1人で美容室を開業するにはどのくらいの費用がかかる?

美容室をオーナー1人が開業するためにかかる費用は、総額で700〜1,200万円が目安といわれています。

開業費用の総額に幅があるのは、小規模な店舗や設備が揃っている「居抜き物件」のように、費用がかからないケースを含むためです。

2014年に日本政策金融公庫が行った新規開業実態調査では、美容室の開業にかかる費用の合計額は940万円でした。(※1)

※参考元1:日本政策金融公庫「創業の手引+

同機関では2023年にも同じ調査を行い、全業種を含めた開業費用の合計額は1,027万円となりました。(※2)

以上の結果から、開業には少なくとも900〜1,000万円の資金が必要と考えられます。

※参考元2:日本政策金融公庫「2023年度新規開業実態調査

開業費用の内訳

開業費用の内訳は次のとおりです。

【開業費用の内訳】

  • 物件取得費(テナント費用)
  • 内外装工事費
  • 設備機器費
  • 備品費
  • 材料費・消耗品費
  • 広告宣伝費
  • 求人費
  • 運転資金

上記のうち、お金がかかるボリュームゾーンは物件取得費(テナント費用)・内外装工事費・設備機器費・運転資金の4項目です。

ボリュームの大きい項目のうち、もっとも費用がかかるのは内外装工事費といわれています。

テナントを借りて店づくりをする場合、1坪あたり40万円程度の費用がかかります。10坪のお店でも400万円が必要になるため、開業資金の総額が1,000万円の例では、全体の40%を占めることになります。

さらに、物件取得費や設備機器費は合計額1,000万円の場合100万円をみておく必要があります。どちらも全体の10%程度ですが、提供するサービスによってはさらに割合が大きくなることも考慮しなければなりません。

美容室向けの特別な助成金・補助金はある?

美容室の事業は、日本標準産業分類の定義では「生活関連サービス業、娯楽業「に含まれ、洗濯・理容・美容・浴場業のうちの「美容業」と定められています。理容室や洗濯業、浴場業と同じサービス業の一種です。(※)

そのため、美容室のみに特化した助成金や補助金はありませんが、サービス業を含めた事業者向けの制度は国や地方自治体が提供しており、そちらを申請して利用することになります。

以前までは、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて業種の転換や業務に使用する設備の導入に補助や助成が利用できましたが、緊急事態宣言の解除や各種制限の緩和を受けて、現在では制度が終了しています。

助成金や補助金は、税金などから賄われている費用です。そのため、申込みが多いと早期に公募を打ち切る場合もあります。

開業のために制度を活用する予定がある方は、国・地方自治体のホームページや役場への問い合わせで、申請可能な支援制度を確認するようにしてください。

※参考元:総務省「日本標準産業分類(令和5年7月告示)

助成金と補助金の違い

助成金と補助金は、どちらも目的にあわせて金銭による援助を行うものです。

明確な定義や使い分けはされていませんが、助成金は基準を満たすことで受け取れるものというイメージがあり、雇用や労働環境にかかわる取り組みを支援するといった特色があります。

一方、補助金は「公共の利益」になるような事業や研究開発のような取り組みをサポートするものとして提供されています。

関連記事:美容室開業に活用できる助成金と活用前に押さえておきたいポイント

1人で美容室を開業する際に利用できる助成金・補助金

1人で美容室を開業する際に利用できる助成金・補助金は次のとおりです。

【1人美容室で利用できる助成金と補助金】

名称概要
小規模事業者持続化補助金販路を開拓する事業者を助成する制度
IT導入補助金ITツールやデバイスの導入を助成する制度
ものづくり補助金革新的サービスや生産プロセスの改善を支援する制度
事業再構築補助金事業の再構築に向けた取り組みを支援する制度
キャリアアップ助成金非正規雇用者の正社員化や待遇改善を支援する制度
両立支援等助成金育児・介護の両立に取り組む事業者を支援する制度
人材開発支援助成金労働者への職業訓練を助成する制度

上記の助成・補助内容について、詳しくみていきましょう。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、働き方改革やインボイス制度の導入といった制度の変更に対応するため、作成した経営計画に基づいて販路を開拓する事業者を対象とした制度です。

新たな販路を開拓するため、事業者が取り組むさまざまな方策や経費を一部補助するもので、該当する類型(枠)にあわせて申請します。

補助の上限はすべての枠で200万円までとなっていますが、2024年現時点では「インボイス特例」として一定の要件を満たしている事業者に、上限額+50万円が上乗せされます。(※)

経営計画の策定は全国の商工会議所や商工会がサポートしています。申請前に該当する類型や申請方法を相談してください。

※参考元:全国商工会連合会「小規模事業者持続化補助金

IT導入補助金

IT導入補助金は、自社の課題に対応するためのITツールの導入や、インボイス制度に対応した会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ハードウェアの導入を行う際に利用できる制度です。

美容室の事業においても、インボイス対応や会計業務の効率化にこの制度を活用できます。補助の上限は導入するものによって異なり、レジ・券売機などの場合は20万円✕グループ構成員数分の金額が上限となります。

申請にあたり、商工会議所などの承認や経営計画の作成は不要です。注意点として、交付申請を行い、交付決定を受けてからITツールの発注・契約・支払いを開始します。支払いを行ったことがわかる証憑(しょうひょう)を提出してから補助金を受け取ります。

※参考元:独立行政法人中小企業基盤整備機構「IT導入補助金2024

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、働き方改革やインボイス制度の導入といった制度の変更に対応するため、革新的なサービスの開発や生産プロセスの改善を図るための設備投資費を補助する制度です。

個人事業主も対象で、オーナーが1人の美容室かつ創業初年度の場合でも申請できます。「省力化枠」「グローバル枠」といくつかの枠が用意されており、該当する枠に申請します。

補助の上限も枠ごとに異なり、DX化のための設備やシステムを導入する場合は「成長分野進出類型」を選びます。1人オーナーの美容室の補助上限は100〜1,000万円となっています。

※2024年6月現在、第18次の公募は締め切られています。第19次公募の情報を確認してください。

※参考元:独立行政法人中小企業基盤整備機構「ものづくり補助金

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化したために、需要や売上回復が期待しづらい状況で、社会の変化に対応する中小企業の事業再構築を支援する制度です。

本制度には、さまざまな業種の事業者支援を継続することで、日本経済の構造転換を促す目的もあります。

補助の上限は、7つある枠と従業員数に応じて異なります。新型コロナウイルス感染症の影響で事業再生に取り組む場合は、C枠の「コロナ回復加速枠(通常類型)」を選択でき、5人以下の事業者は1,000万円まで上限が設けられています。

それぞれの枠では、必須要件とその他の要件を満たしていなければなりません。新市場への進出、組織の再編といった事業の再構築を検討する場合は、本制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

※参考元:独立行政法人中小企業基盤整備機構「事業再構築補助金

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用者が企業内で正社員化や処遇を改善できるように、事業者側で行う取り組みへの助成制度です。

本制度は「正社員化支援」「処遇改善支援」の2種類があり、どちらも労働局やハローワークでキャリアアップ計画を作成します。

助成の上限額は、正社員化コースを選んだ中小企業の場合、無期雇用労働者を正社員化すると40万円(2期分の合計額)となります。さらに、母子家庭の対象者や派遣労働者を雇用するといった措置をとると加算額が上乗せされます。

※参考元:厚生労働省「キャリアアップ助成金

両立支援等助成金

両立支援等助成金は、仕事と育児や介護を両立できる職場環境づくりを支援する制度です。

美容室に勤務するオーナーやスタッフが育児・介護に取り組めるように、6つのコースが選べます。男性の育児休暇を支援する「出生児両立支援コース」も用意されています。

助成の上限額は、コースによって細かく決められています。中小企業の事業主のみを対象とした「介護離職防止支援コース」は、介護支援プランを作成して介護休業が取得できるように取り組んだ場合、休業取得時に30万円が支給されます。

両立支援等助成金の6つのコースはすべて中小企業の事業主を対象としています。対象の業種は小売業・サービス業・卸売業・その他の4種類ですが、法人化が条件のため注意が必要です。

※参考元:厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、事業主等が労働者に対して専門的な知識や技術を習得させるための職業訓練を計画し、その計画に沿って実施した際に経費や賃金の一部を助成する制度です。

本制度では4つのコースが用意され、そのうちの2つ「人材育成支援コース」と「人への投資促進コース」は、複数の訓練タイプが選択できます。

美容業で「人材育成支援コース」の中の「人材育成訓練」を選択した場合、カリキュラムの作成や講師の選定を行い、OJTとOff-JTを組み合わせて10時間以上の教育訓練を行うことで、1時間あたり760〜960円/人と、規定の割合で経費の一部が助成されます。

※参考元:厚生労働省「人材開発支援助成金

助成金・補助金の申請から受け取りまでの流れ

助成金・補助金の申請から受け取りまでの流れをみていきましょう。

【申請から受け取りまでの流れ】

  • 補助金・助成金を調べる
  • 計画書などを作成する
  • 申請期間内に申請する
  • 審査通過・受理される
  • 対策や取り組みを実施する
  • 実施状況について報告する
  • 報告書が受理される

補助金や助成金が受け取れるのは、支給申請と呼ばれるプロセスを経てからになります。制度によっては申請先の機関に報告を行い、効果が認められると支給の対象となります。

一例として「キャリアアップ助成金」では、キャリアアップ計画に基づいて取り組みや正社員化を実施し、被雇用者に賃金を支払ってから支給申請が行えます。支給申請後に審査が行われ、通過すれば助成金が振り込まれます。

関連記事:美容室開業前にチェックしておきたいやることリストと成功の秘訣

1人で美容室を開業する際に助成金・補助金を活用するメリット

ここからは、1人で美容室を開業する際に期待できる4つのメリットをみていきましょう。

メリット①返済不要で雑収入として取得できる

補助金や助成金は融資として借りるお金ではないため、返済は不要です。

振り込まれたお金は「雑収入」に計上できるほか、個人事業主の場合は確定申告によって控除の対象となります。

メリット②労働環境を整える機会になる

雇用するスタッフの待遇改善、育児休業や介護休業といった休暇のとりやすさから、労働環境の改善につなげられます。

働きやすい職場として認知されれば、将来的に人手不足の解消も期待できるでしょう。

メリット③社会的信用を得られる

事業の再構築や人材開発といった課題の改善に取り組むことで、社会的信用度の向上にもつながります。

メリット④事業計画を見直しできる

事業として安定していても、時代や需要の変化によっては少しずつずれが生じてくる可能性があります。

支援制度の申請にあわせて事業計画を見つめ直してみると、今まで意識していなかったところに改善点が見つかるかもしれません。

1人で美容室を開業する際に助成金・補助金を活用するデメリット

1人で美容室を開業する際に助成金・補助金を活用する際に注意しておきたいデメリットも確認していきましょう。

デメリット①申請に時間と手間がかかる

制度の申請から振込までには、書類の準備や電子申請のためのアカウント取得、計画書の作成といった手間がかかります。業務の合間に行うもののため、スケジュールに余裕をもって取り組む必要があります。

デメリット②必ず受給できるとは限らない

申請に何らかの不備があれば、審査の段階で非承認となり補助金や助成金が受給できない可能性があります。虚偽の情報や内容についても厳しく審査されるため、内容が正しいことをよく確認してから申請を行いましょう。

デメリット③ある程度の資金は事前に用意しなければいけない

補助金や助成金は、申し込んですぐに振り込まれるものではないため、一定額の資金は事前に準備しておかなければなりません。

デメリット④支給されるまでに時間を要する

どの制度も申し込みを行ってから審査が行われ、受給の条件を満たした場合にのみ補助や助成の対象となります。制度にもよりますが、1年以上経過してから振り込まれるケースもあります。

1人美容室の開業では助成金・補助金を活用しよう

今回は、美容室を1人で開業するためにかかる金額と内訳、申請できる補助金や助成金の種類について紹介しました。

個人事業主として事業を行うケースと、法人化して事業を営むケースに分けられますが、助成・補助の資格を満たすとさまざまな支援制度が活用できます。

2024年現在、本記事で紹介した制度のほかにも自治体ごとの補助が受けられる場合もありますので、ぜひ美容室の開業に活用してみてはいかがでしょうか。

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