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美容室は資金ゼロでも開業できる?開業費用の目安と資金調達方法

2024年09月27日

2024年10月16日 更新

「美容室って資金ゼロでも開業できるの?」「開業に必要な費用を教えて欲しい」などと考えていませんか。自己資金を貯める前に、開業したいと考えている方もいるでしょう。結論から述べると、資金ゼロでも美容室を開業できる可能性はあります。

ただし、経営は不安定になりがちです。

ここでは、美容室の開業にかかる費用の目安と資金ゼロで美容室を開業できる可能性について解説しています。

さらに、資金調達の方法や資金調達の流れなども紹介しています。美容室の開業を検討している方は参考にしてください。

美容室の開業費用はどれくらい?

美容室の開業費用は、ケースで異なります。ここでは、開業費用の相場と費用の内訳を紹介します。

開業にかかる費用相場

美容室の開業費用は、出店エリア、店舗の外装、店舗の内装、スタッフの人数、設備のグレードなどで変動します。ただし、相場がないわけではありません。一般的には、1,000万円程度かかると考えられています。金額の根拠になっているのが、日本政策金融公庫が発表している「創業の手引き+」です。

「創業の手引き+」は、創業者の実態を明らかにした資料といえるでしょう。同資料によると、サロン開設費用の合計は940万円です(不動産を購入した企業を除く)。やや古いデータ(2014年度)ですが、参考にすることはできるでしょう。

出典:日本政策金融公庫「新たに美容業を始めるみなさまへ 創業の手引き+

日本政策金融公庫は、「2023年度新規開業実態調査」で、別の角度から開業費用について調査しています。同調査の対象は、2022年4月から9月にかけて日本政策金融公庫の融資を受けた開業後1年以内の企業です。この資料によると、開業費用の平均値は1,027万円、中央値は550万円です。具体的な割合は以下のようになっています。

開業資金割合
250万円未満20.2%
250~500万円未満23.6%
500~1,000万円未満28.4%
1,000~2,000万円未満18.8%
2,000万円以上9.0%

調査対象を美容室に限っているわけではありませんが、本資料でも開業費用の平均は1,000万円程度です。ただし、中央値が550万円、全体の4割以上が500万円未満で開業している点も見逃せません。以上をもとに考えると、1,000万円以下でも美容室を開業できる可能性はあるといえるでしょう。

出典:日本政策金融公庫総合研究所「 「『2023年度新規開業実態調査』~アンケート結果の概要~

費用の内訳

美容室の開業には、どのような費用がどれくらいかかるのでしょうか。参考に「創業の手引き+」のデータを紹介します。

費用の内訳かかった費用総額に占める割合
内外装工事476万円50.6%
機械・什器・備品等197万円21.0%
運転資金150万円16.0%
テナント賃借費用104万円11.1%
営業保証金・FC加盟金13万円1.4%

ここでは、主な費用について解説します。

内外装工事

上記のデータでわかるとおり、美容室の開業では内外装工事にまとまった金額がかかります。シャンプー台の設置に伴い、大がかりな配管工事を必要とするケースが多いためです。したがって、シャンプー台の数を減らすと内外装工事を抑えられる可能性があります。ただし、日々の営業に関わるため慎重な検討が必要です。あるいは、居抜き物件の利用も考えられます。条件にマッチする居抜き物件を利用すれば、内外装工事にかかる費用を半額程度に抑えられることもあります。

機械・什器・備品等

同様に、機械・什器・備品等も費用がかかりやすいといえるでしょう。1台で数十万円するシャンプー台など、開業にあたり一定の設備が必要になるためです。また、パソコン、電話、テーブルなどの什器・備品も用意しなければなりません。細々としたものを含めると、一般的な美容室で200万円程度の費用がかかります。

運転資金

忘れてはならない費用として運転資金もあげられます。運転資金は、美容室を続けていくため必要になるお金です。「創業の手引き+」によると、開業した企業の7割が事業を軌道に乗せるまで半年以上かかっています。開業後1年間の平均月商が予想売上に満たなかった企業の割合は57.1%です。以上を踏まえると、開業時に十分な運転資金を用意しておく必要があります。一般的な目安は3カ月分といわれています。

テナント賃借費用

テナント賃借費用は、物件の取得にかかる保証金・礼金・仲介手数料・前家賃などです。開業資金に占める割合はそれほど高くありませんが、それでも100万円以上かかるケースが少なくありません。何にいくらかかるか確かめておくことが大切です。

自己資金ゼロでも開業できる?

自己資金ゼロでの開業は厳しいと考えられます。美容室の開業には1,000万円程度の費用がかかるためです。自己資金がない場合は、原則として全額を融資で賄うことになります。しかし、自己資金ゼロで営業実績が乏しいと、民間金融機関から資金を調達することは難しいでしょう。

ただし、可能性がないわけではありません。日本政策金融公庫が、自己資金ゼロでも申し込める創業融資を展開しているためです(詳しくは「新規開業資金」で解説しています)。審査の通過を保証するものではありませんが、自己資金ゼロでも美容室を開業できる可能性は残されています。

出典:日本政策金融公庫「融資制度のご案内

自己資金ゼロで美容室を開業する際に、意識しておきたいのが自己資本比率です。自己資本比率は以下の計算式で求められます。

自己資本比率=自己資本/総資本

たとえば、自己資本が300万円で他人資本が700万円であれば、自己資本比率は30%(300万円/1000万円)です。自己資本比率が低いと、経営が不安定になり、中長期的な倒産リスクが高まります。

ちなみに、日本政策金融公庫が発表している資料によると、美容業における黒字かつ自己資本プラス企業の割合は31.9%(調査対象430社中137社)です。また、黒字かつ自己資本プラス企業における自己資本比率の平均は20.5%(全体の平均値は-25.1%)となっています。以上を参考に、自己資本比率を検討するとよいかもしれません。

出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査

関連記事:美容室開業資金のため融資を受けるための流れと審査通過のポイント

開業資金を調達する方法

開業資金は次の方法で調達できます。

【資金調達方法】

  • 出資
  • 補助金
  • 融資

出資

特定の団体、個人から資金の提供を受ける方法です。返済の義務はありません。資金の見返りとして、株式を提供することが一般的です。事業計画や創業者に魅力を感じた団体、個人が出資します。出資には以下の種類があります。

【出資の種類】

  • ベンチャーキャピタル:成長性の高い企業に会社、ファンドが事業として出資
  • 個人投資家(エンジェル):関係性を活かして個人の投資家が出資
  • クラウドファンディング:夢に共感した不特定多数の支援者から資金を調達する方法(法人や個人ではなくプロジェクトに出資)

返済義務のない資金を調達できる点は魅力ですが、株式の提供割合によっては美容室の経営をコントロールされることも考えられます。契約内容などをしっかりと確認しておくことが大切です。

補助金

国や地方自治体は、創業に活用できるさまざまな補助金、助成金を実施しています。一例としてあげられるのが、東京都と公益財団法人東京都中小企業振興公社が実施している創業助成事業です。参考に、事業の詳細を紹介します。

目的2030年度に都内の開業率を12%まで向上させる政策目標の達成
対象都内創業予定者または創業後5年未満の中小企業者など
対象事業都内に本店または主たる事業所がある事業など
助成限度額対象経費の3分の2以内(限度額400万円)
対象経費創業初期に必要な賃借料、器具備品購入費、広告費、従業員人件費など

申請要件として「東京都および都内区市町村が行う創業を対象とする制度融資利用者」などもあげられています。このほかにも、国や自治体はさまざまな補助金、助成金を実施しています。利用を検討したい方は、地方自治体の公式サイトなどを確認するとよいでしょう。(※補助金・助成金は原則として後払いです。立て替え払いが必要になります)

出典:東京都「令和6年度第1回 創業助成事業募集のお知らせ

関連記事:美容室開業に活用できる助成金と活用前に押さえておきたいポイント

融資

以上のほかでは、金融機関からの融資で資金を調達することもできます。日本政策金融公庫が発表している資料によると、資金調達額に占める金融機関等からの借り入れの割合は65.1%(1180万円中768万円)です。融資は主な資金調達方法といえるでしょう。

融資の注意点は、審査を受けなければならないことと元金に加え利息を返済しなければならないことです。申し込みを行えば、誰でも資金を調達できるわけではありません。事前に準備をしたうえで、返済計画を立ててから利用する必要があります。

出典:日本政策金融公庫総合研究所「 『2023年度新規開業実態調査』~アンケート結果の概要~

融資を受ける方法

基本的な資金調達方法は、金融機関からの融資です。ここからは、融資を受ける方法と融資の流れを紹介します。

創業計画書の作成

融資を受けるため必要になるのが、資金計画や販売計画などをまとめた創業計画書です。金融機関は、この資料などをもとに実績が乏しい事業を審査します。創業計画書に記載する主な内容は次のとおりです。

【記載内容】

  • 創業動機
  • 事業経験
  • 商品・サービス
  • 取引先・取引条件
  • 開業資金
  • 資金調達方法
  • 事業の見通し

以上をもとに、事業として成り立つか審査されます。成り立たなければ、金融機関は返済を受けられないためです。したがって、資金計画、収支計画、返済計画を丁寧に立てることが大切です。たとえば、売上高の根拠として、美容椅子が〇台、1日平均回転数が〇回、客単価が○○円、1カ月あたりの営業日数が〇日などを示すと説得力のある計画になります。

新規開業資金

創業時は営業実績が乏しいため、民間金融機関から融資を受けにくい傾向があります。代わりに利用されているのが日本政策金融公庫の創業融資「新規開業資金」です。日本政策金融公庫は、一般の金融機関が行いにくい機能を補完する政府関係金融機関といえるでしょう。したがって、融資を受けにくい中小企業、小規模事業者を積極的に支援しています。新規開業資金の概要は次のとおりです。

対象新たに事業を始める方、事業開始後おおむね7年以内の方
融資限度額7,200万円(運転資金4,800万円を含む)
返済期間設備資金:20年以内 運転資金:10年以内
担保・保証人応相談
自己資金要件なし

出典:日本政策金融公庫「新規開業資金

自己資金要件がないため、手元にまとまった資金がない方でも申し込めます。新たに事業を始める方、税務申告を2期終えていない方が利率の引き下げ(原則0.65%)を受けられる点もポイントです。詳しくは、日本政策金融公庫の公式サイトでご確認ください。

融資を受ける際の手続きの流れ

融資を受ける基本的な流れは次のとおりです。

【融資の流れ】

  1. 金融機関で相談
  2. 創業計画書など、必要書類を用意
  3. 2を添えて申し込み
  4. 金融機関の担当者と面談
  5. 融資の決定
  6. 融資の実行(指定の講座へ送金)
  7. 返済の開始

申し込みにあたり、創業計画書、設備資金の見積書、運転免許証などが必要になります。具体的な必要書類は、相談時に確認が必要です。面談では、資金の使途、事業計画、店舗の予定地などについてヒアリングが行われます。また、これらに関連する資料も求められます。準備を済ませてから手続きを進めましょう。

美容室は資金ゼロでも開業できる可能性がある

ここでは、美容室の開業資金について解説しました。開業にかかる費用の目安は1,000万円です。自己資金ゼロの場合は、この金額を出資・補助金・融資で調達することになります。日本政策金融公庫の新規開業資金は自己資金要件を設けていません。したがって、手元にお金がなくても美容室を開業できる可能性はあります。ただし、審査は厳しくなると予想されます。また、開業後の経営も不安定になりやすいでしょう。以上を踏まえて、開業のタイミングを慎重に検討することが大切です。

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